はじめに
大型建築物の空調設備では、建物全体へ冷水や温水を供給するために「熱源機器」が使用されます。
その中でも、ガスや蒸気などの熱エネルギーを利用して冷水を作る設備が吸収式冷温水機です。
吸収式冷温水機は、
- オフィスビル
- 病院
- ホテル
- 商業施設
- 工場
などの中央空調設備で多く採用されています。
電気式のチラーとは異なり、ガスや蒸気を利用して冷房を行うことができるため、電力ピーク対策やエネルギーの有効利用にも役立ちます。
この記事では、現場監督や設備担当者向けに、吸収式冷温水機の仕組み・構造・種類・施工時の注意点についてわかりやすく解説します。
吸収式冷温水機とは?
吸収式冷温水機とは、ガスや蒸気などの熱エネルギーを利用して冷水や温水を作る熱源機器です。
別名、
- 吸収式冷凍機
- 吸収式冷温水発生機
- 吸収式チラー
とも呼ばれます。
簡単にいうと、
「電気ではなく熱の力を利用して冷房を行う大型空調用熱源機器」
です。
作られた冷温水は、
- AHU(エアハンドリングユニット)
- FCU(ファンコイルユニット)
へ送られ、室内の冷暖房に利用されます。
吸収式冷温水機の役割
① 冷房用の冷水を作る
夏季には冷水を製造します。
流れ:
吸収式冷温水機
↓
冷水ポンプ
↓
AHU・FCU
↓
室内空気を冷却
↓
戻り冷水
↓
吸収式冷温水機
という循環になります。
② 暖房用の温水を作る
機種によっては暖房運転も可能です。
冬季には、
吸収式冷温水機
↓
温水配管
↓
AHU・FCU
↓
室内暖房
という流れで使用します。
③ 電力消費を抑える
吸収式冷温水機は、圧縮機を使用する電気式チラーとは異なり、熱エネルギーを利用して冷房を行います。
そのため、
- 電力負荷の低減
- ガス利用によるエネルギー分散
が可能になります。
吸収式冷温水機の仕組み
吸収式冷温水機は、冷媒と吸収液の性質を利用して冷却を行う設備です。
一般的な冷凍機では圧縮機で冷媒を圧縮しますが、吸収式では、
- 吸収
- 再生
- 凝縮
- 蒸発
というサイクルを利用します。
吸収式冷温水機の冷却サイクル
① 蒸発器
冷媒(水)が蒸発することで、冷水から熱を奪います。
流れ:
冷水
↓
冷媒へ熱を渡す
↓
冷媒が蒸発
↓
冷水が冷却される
② 吸収器
蒸発した冷媒(水蒸気)を吸収液が吸収します。
一般的には、
- 臭化リチウム(LiBr)
- 水
の組み合わせが使用されます。
③ 再生器(発生器)
吸収液を加熱して、冷媒を分離します。
熱源:
- 都市ガス
- LPG
- 蒸気
- 排熱
など。
④ 凝縮器
冷媒蒸気を冷却して液体へ戻します。
水冷式の場合は、
凝縮器
↓
冷却水
↓
冷却塔
↓
大気へ放熱
となります。
⑤ 膨張部
冷媒の圧力を下げ、再び蒸発器へ送ります。
このサイクルを繰り返して冷水を作ります。
吸収式冷温水機の構造
主な構成部品は以下の通りです。
① 再生器(発生器)
熱源を利用して吸収液から冷媒を分離する部分です。
吸収式冷温水機の中心となる部分です。
② 吸収器
冷媒蒸気を吸収液へ吸収させます。
③ 蒸発器
冷水を冷却する熱交換部分です。
④ 凝縮器
冷媒を液化させる部分です。
⑤ 熱交換器
吸収液の熱を効率よく利用します。
⑥ 制御盤
以下を制御します。
- 温度
- 圧力
- 燃焼制御
- 異常監視
吸収式冷温水機の種類
① ガス吸収式冷温水機
都市ガスやLPGを燃料として使用します。
特徴:
- 電力消費が少ない
- 大型施設向き
用途:
- ビル
- ホテル
- 病院
など。
② 蒸気吸収式冷温水機
蒸気を熱源として使用します。
用途:
- 工場
- 病院
- 大規模施設
など。
③ 排熱利用型吸収式冷温水機
工場などで発生する排熱を利用する方式です。
メリット:
- 未利用エネルギー活用
- 省エネルギー化
につながります。
吸収式冷温水機とチラーの違い
| 項目 | 吸収式冷温水機 | 電気式チラー |
|---|---|---|
| 熱源 | ガス・蒸気など | 電気 |
| 圧縮機 | 使用しない | 使用する |
| 電力消費 | 少ない | 比較的大きい |
| 用途 | 大型施設 | 幅広い |
| 特徴 | 熱利用型 | 電気駆動型 |
簡単にいうと、
吸収式冷温水機=熱で冷水を作る設備
チラー=電気で冷水を作る設備
です。
吸収式冷温水機と冷却塔の関係
多くの吸収式冷温水機は水冷式で運転します。
熱の流れ:
室内の熱
↓
冷水
↓
吸収式冷温水機
↓
冷却水
↓
冷却塔
↓
大気へ放熱
となります。
そのため、
- 冷却塔
- 冷却水ポンプ
- 水処理設備
と組み合わせて使用されます。
吸収式冷温水機のメリット
① 電力ピークを抑えられる
電気式チラーと比較して電力使用量を抑えられます。
② 排熱を有効利用できる
工場などでは余った熱エネルギーを利用できます。
③ 大容量空調に向いている
大型建築物の中央空調に適しています。
吸収式冷温水機のデメリット
① 装置が大型
設置スペースが必要です。
② 起動時間が長い
電気式チラーと比較すると立ち上がりに時間がかかります。
③ 定期メンテナンスが必要
吸収液の管理や真空状態の維持が重要です。
吸収式冷温水機設置時の注意点
① 搬入計画を確認する
大型機器のため、
- 搬入口寸法
- 搬入経路
- 揚重計画
を事前に確認します。
② 冷温水配管を確認する
確認項目:
- 往き・還り配管
- 流量方向
- バルブ位置
- 保温施工
③ 冷却水配管を確認する
水冷式の場合、
- 冷却水往管
- 冷却水還管
- 冷却塔接続
を確認します。
④ 燃料配管を確認する
ガス式の場合、
- ガス配管
- ガス漏れ検査
- 安全装置
の確認が必要です。
⑤ 真空状態を確認する
吸収式冷温水機は内部の真空状態が性能に影響します。
真空不良になると、
- 冷却能力低下
- 運転不良
につながります。
吸収式冷温水機の故障原因
冷却能力が低下する
原因:
- 吸収液劣化
- 真空低下
- 熱交換器汚れ
- 冷却水温度上昇
異常停止する
原因:
- 燃焼異常
- センサー故障
- 制御不良
効率が低下する
原因:
- スケール付着
- 水質悪化
- メンテナンス不足
現場監督が確認すべき施工ポイント
施工管理では以下を確認します。
✅ 機器仕様確認
✅ 搬入計画確認
✅ 基礎・架台確認
✅ 冷温水配管確認
✅ 冷却水配管確認
✅ ガス・蒸気配管確認
✅ 防振施工確認
✅ 保温施工確認
✅ 試運転確認
試運転では、
- 冷水温度
- 冷却水温度
- 燃焼状態
- 異音
- 漏水
- 真空状態
を確認します。
まとめ
吸収式冷温水機とは、ガスや蒸気などの熱エネルギーを利用して冷水や温水を作る大型空調熱源機器です。
主な特徴は、
- 電力消費を抑えられる
- 大容量空調に適している
- 排熱利用が可能
という点です。
中央空調設備では、
吸収式冷温水機
↓
冷温水ポンプ
↓
AHU・FCU
↓
室内空調
という流れで使用されます。
現場監督としては、
「冷温水配管」「冷却水配管」「燃料配管」「真空管理」「試運転」
を確認することで、安定した空調設備の構築につながります。
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