はじめに
空調設備の冷温水配管や給湯設備では、「膨張タンク」という機器が使用されています。
膨張タンクは、水の温度変化による体積膨張を吸収し、配管や機器を保護するための装置です。
水は温度が上昇すると体積が増える性質があります。
密閉された配管内で水の膨張を逃がす場所がない場合、
- 配管の圧力上昇
- 機器の破損
- 安全弁の作動
- 漏水
などのトラブルにつながります。
この記事では、現場監督や設備担当者向けに、膨張タンクの役割・仕組み・種類・設置時の注意点についてわかりやすく解説します。
膨張タンクとは?
膨張タンクとは、温度変化によって増加する水の体積(膨張水)を一時的に受け入れ、配管内の圧力を一定に保つための設備機器です。
英語では、
「Expansion Tank」
と呼ばれます。
主に以下の設備で使用されます。
- 冷温水空調設備
- 暖房設備
- 給湯設備
- ボイラー設備
- 床暖房設備
など。
特に、冷温水が循環する密閉式空調配管では欠かせない機器です。
なぜ膨張タンクが必要なのか?
水は温度によって体積が変化します。
例えば、冷たい状態の水を加熱すると、水分子の動きが活発になり体積が増えます。
開放された容器であれば問題ありませんが、空調配管のような密閉された配管では逃げ場がありません。
その結果、
- 配管内圧力が上昇する
- ポンプや機器へ負荷がかかる
- 配管接続部から漏れる
などの問題が発生します。
そこで膨張タンクを設置し、増えた水を吸収します。
膨張タンクの役割
① 水の膨張を吸収する
膨張タンクの最も重要な役割です。
冷温水設備では、
運転停止時
↓
水温低下
↓
水の体積減少
運転時
↓
水温上昇
↓
水の体積増加
という変化が発生します。
膨張タンクが水量変化を吸収することで、配管内圧力を安定させます。
② 配管や機器を保護する
膨張タンクがない場合、膨張した水によって圧力が上昇します。
その結果、
- 配管破損
- ポンプ故障
- 熱交換器破損
- 安全弁からの吹出し
などにつながる可能性があります。
③ 空調設備を安定運転させる
冷温水配管では一定の圧力を維持することが重要です。
膨張タンクによって圧力変動を抑えることで、
- ポンプの安定運転
- 流量確保
- 空調能力維持
につながります。
膨張タンクの仕組み
膨張タンクは内部を、
- 水側
- 空気(または窒素)側
に分けています。
一般的にはダイヤフラム式が使用されます。
ダイヤフラム式膨張タンクの動作
通常時
① 配管内の水圧と空気圧がバランスしている
↓
② ダイヤフラムは中央付近に位置
↓
③ 圧力は安定
水が膨張した時
① 水温上昇により水量が増える
↓
② 増えた水が膨張タンクへ流入
↓
③ ダイヤフラムが空気側へ押される
↓
④ 空気が圧縮される
↓
⑤ 圧力上昇を吸収する
という仕組みです。
膨張タンクの種類
膨張タンクには大きく分けて以下の種類があります。
① 密閉式膨張タンク
現在の空調設備で最も多く使用されるタイプです。
特徴:
- 配管と密閉接続される
- 空気室で膨張を吸収する
- 設置スペースが小さい
使用例:
- 冷温水配管
- ファンコイル設備
- パッケージ空調補給水系統
② 開放式膨張タンク
タンク上部が大気開放されているタイプです。
特徴:
- 構造がシンプル
- 古い暖房設備などで使用
- 高所への設置が必要
以前は多く使用されていましたが、現在の大型空調設備では密閉式が主流です。
③ ダイヤフラム式膨張タンク
密閉式の代表的なタイプです。
内部のゴム製ダイヤフラムによって、水と空気を分離しています。
メリット:
- 水と空気が直接触れない
- 腐食しにくい
- メンテナンス性が高い
膨張タンクとエアセパレーターの違い
どちらも冷温水配管で使用されますが、役割は異なります。
| 項目 | 膨張タンク | エアセパレーター |
|---|---|---|
| 目的 | 圧力変化を吸収 | 空気を除去 |
| 対象 | 水の体積変化 | 配管内の空気 |
| 設置目的 | 圧力安定 | 循環改善 |
| 主な問題防止 | 圧力上昇 | エア噛み |
簡単に言うと、
膨張タンク=水の膨張を吸収する装置
エアセパレーター=水中の空気を取り除く装置
です。
膨張タンクの設置場所
一般的な設置場所は以下です。
① ポンプ吸込側
冷温水循環ポンプの吸込側に設置することが多いです。
理由:
- ポンプ入口圧力を安定させる
- キャビテーション防止
② 熱源機器付近
例:
- 冷凍機
- ヒートポンプ
- 温水ボイラー
などの近くに設置します。
③ 配管系統の戻り側
空調設備では、一般的に冷温水還り配管側に設置されます。
膨張タンク設置時の注意点
① 初期圧力を確認する
密閉式膨張タンクでは、空気側の圧力設定が重要です。
設定が不適切だと、
- 膨張水を吸収できない
- 圧力変動が大きい
などの問題が発生します。
② 容量選定を適切に行う
膨張タンク容量は、
- 配管内水量
- 温度差
- 設計圧力
などから決定します。
容量不足の場合、圧力上昇の原因になります。
③ メンテナンススペースを確保する
点検や交換ができるよう、
- 周囲のスペース確保
- バルブ設置
- 排水経路確認
が必要です。
④ 配管支持を確認する
膨張タンクは水が入ると重量が増加します。
特に大型タイプでは、
- 架台
- 吊り支持
- アンカー固定
などを確認します。
膨張タンクの故障原因
圧力が安定しない
原因:
- 空気圧不足
- ダイヤフラム破損
- 容量不足
安全弁が頻繁に作動する
原因:
- 膨張タンク容量不足
- 初期圧力不良
- タンク故障
水漏れが発生する
原因:
- ダイヤフラム破損
- 接続部漏れ
- 腐食
現場監督が確認すべき施工ポイント
施工管理では以下を確認します。
✅ 機器仕様書と容量確認
✅ 設置位置確認
✅ 配管接続方向確認
✅ 圧力計・バルブ設置確認
✅ 保温施工前の漏れ確認
✅ 試運転時の圧力確認
特に試運転時は、冷温水配管の圧力が設計値内に収まっているか確認することが重要です。
まとめ
膨張タンクとは、冷温水や給湯設備などで、水の温度変化による体積膨張を吸収し、配管内の圧力を安定させるための装置です。
主な役割は、
- 膨張水の吸収
- 配管や機器の保護
- 圧力変動の抑制
- 空調設備の安定運転
です。
空調設備では目立たない機器ですが、冷温水循環システムを正常に動かすためには欠かせない重要な設備です。
現場監督としては、容量・設置位置・初期圧力・配管接続を確認することが、トラブル防止につながります。
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