はじめに
建物の空調設備や換気設備の施工現場では、必ずといっていいほど**「ダクト」**が登場します。
天井裏を見てみると、銀色の大きな箱型の配管のようなものが走っています。
これが「ダクト」です。
しかし、現場では、
「ダクトって何のためにある?」
「給気ダクトと還気ダクトは何が違う?」
「角ダクトと丸ダクトはどう使い分ける?」
「ダクトの保温はなぜ必要?」
「施工するとき、現場監督はどこを確認すればいい?」
と疑問に感じることもあります。
ダクトは、簡単にいうと、
空気を目的の場所まで運ぶための通り道
です。
空調設備では、冷やした空気や温めた空気を室内へ送り、室内の空気を戻したり、外気を取り入れたりします。
また、換気設備では、汚れた空気を屋外へ排出したり、新鮮な外気を室内へ取り入れたりします。
この記事では、現場監督や設備担当者向けに、
- ダクトとは何か
- ダクトの役割
- ダクトの種類
- 給気・還気・外気・排気の違い
- 角ダクトと丸ダクトの違い
- ダクトに使用される材料
- ダクト施工の流れ
- 保温・防露
- ダクト施工時の注意点
- 試験・調整
- 現場監督のチェックポイント
について、わかりやすく解説します。
ダクトとは?
ダクトとは、空気を送ったり戻したりするための空気の通り道です。
空調設備や換気設備などで使用されます。
例えば空調設備では、
空調機(AHU)
↓
給気ダクト
↓
吹出口
↓
室内
↓
吸込口
↓
還気ダクト
↓
空調機
というように空気を循環させます。
つまり、
ダクト=空気を運ぶための配管
と考えるとイメージしやすいです。
ただし、水や冷媒を運ぶ「配管」と違って、ダクトは主に空気を搬送するための設備です。
ダクトの主な役割
ダクトには大きく分けて、以下のような役割があります。
① 空調された空気を送る
冷房・暖房した空気を室内へ送ります。
② 室内の空気を戻す
室内の空気を空調機へ戻します。
③ 外気を取り入れる
屋外の新鮮な空気を建物内へ取り入れます。
④ 汚れた空気を排出する
トイレや厨房などの空気を屋外へ排出します。
⑤ 煙を排出する
排煙設備では、火災時に煙を屋外へ排出するためにも使用されます。
ダクトの種類
ダクトは、用途によってさまざまな種類があります。
空調・換気設備で特に覚えておきたいのが、
- 給気ダクト
- 還気ダクト
- 外気ダクト
- 排気ダクト
- 排煙ダクト
です。
① 給気ダクト
給気ダクトは、室内へ空気を送るためのダクトです。
例えば、
AHU
↓
給気ダクト
↓
吹出口
↓
室内
という流れになります。
冷房の場合は冷たい空気、暖房の場合は温かい空気を室内へ送ります。
現場では「SA」と表記されることがあります。
SAはSupply Airの略です。
② 還気ダクト
還気ダクトは、室内の空気を空調機へ戻すためのダクトです。
例えば、
室内
↓
還気口
↓
還気ダクト
↓
AHU
という流れになります。
空調機で再び空気を処理して、室内へ送ります。
図面では「RA」と表記されることがあります。
RAはReturn Airの略です。
③ 外気ダクト
外気ダクトは、屋外の空気を室内や空調機へ取り入れるためのダクトです。
例えば、
屋外
↓
外気取入口
↓
外気ダクト
↓
AHU
という流れです。
外気を取り入れることで、室内の二酸化炭素濃度などを適切に保ち、換気を行います。
図面では「OA」と表記されることがあります。
OAはOutside Airの略です。
④ 排気ダクト
排気ダクトは、室内の空気を屋外へ排出するためのダクトです。
例えば、
室内
↓
排気口
↓
排気ダクト
↓
屋外
という流れです。
トイレや厨房、機械室などで使用されます。
図面では「EA」と表記されることがあります。
EAはExhaust Airの略です。
⑤ 排煙ダクト
排煙ダクトは、火災時に発生した煙を排出するためのダクトです。
通常の換気ダクトとは目的が異なります。
排煙設備は防災設備として重要なので、
- 防火区画
- 防煙区画
- 防火ダンパー
- 排煙口
- 排煙機
- ダクトの仕様
などを設計図や法令に基づいて確認する必要があります。
給気・還気・外気・排気の違い
ここは現場でよく使うので、覚えておきましょう。
| 種類 | 略号 | 役割 |
|---|---|---|
| 給気 | SA | 室内へ空気を送る |
| 還気 | RA | 室内から空調機へ戻す |
| 外気 | OA | 屋外から空気を取り入れる |
| 排気 | EA | 室内から屋外へ排出する |
| 排煙 | SEなど | 火災時の煙を排出する |
※略号は図面や設計者によって異なる場合があるため、最終的には図面の凡例を確認しましょう。
ダクトの形状による種類
ダクトは形状によっても分類できます。
代表的なのが、
- 角ダクト
- 丸ダクト
- スパイラルダクト
- フレキシブルダクト
です。
① 角ダクト
断面が四角形になっているダクトです。
大型建築物では非常によく使用されます。
例えば、
- オフィスビル
- 学校
- 病院
- 商業施設
- 工場
などです。
角ダクトの特徴
大きな風量を搬送しやすく、天井裏などの限られたスペースでも高さを抑えて設置しやすいのが特徴です。
ただし、サイズが大きくなるほど重量も増えるため、支持方法が重要になります。
② 丸ダクト
断面が円形のダクトです。
角ダクトと比較して、一般的に空気が流れやすく、強度面でも有利な場合があります。
ただし、天井裏の限られたスペースでは、角ダクトのほうが納まりやすい場合があります。
③ スパイラルダクト
帯状の鋼板をらせん状に巻いて作った円形ダクトです。
比較的施工性がよく、換気設備などで使用されます。
④ フレキシブルダクト
柔軟性のあるダクトです。
主に、
- 吹出口への接続
- 吸込口への接続
- 短い区間の接続
などで使用されます。
ただし、必要以上に長くしたり、強く曲げたりすると圧力損失が大きくなる場合があります。
ダクトに使用される主な材料
ダクトでは、用途や設計条件によってさまざまな材料が使用されます。
代表的なのが、
- 亜鉛鉄板
- ステンレス鋼板
- ガルバリウム鋼板など
- フレキシブルダクト
などです。
厨房排気など、腐食や油などへの対策が必要な場所では、用途に応じた材料を選定します。
実際の現場では、
設計図
特記仕様書
施工要領書
などに指定された材料を使用することが基本です。
ダクトの接続方法
ダクトは、複数の部材を接続して施工します。
角ダクトでは、
- フランジ接続
- クリップ等による接続
などが使用されます。
丸ダクトでは、
- 継手
- フランジ
- 差し込み接続
など、仕様に応じた接続方法を使用します。
接続部では、空気漏れを防ぐためのシール処理が重要です。
ダクト施工の流れ
現場では、一般的に以下のような流れで施工します。
① 施工図・総合図を確認
まず、ダクトルートを確認します。
特に天井裏では、
- ダクト
- 配管
- 電気配線
- ケーブルラック
- 消火設備
- 梁
- 天井下地
などが集中します。
そのため、総合図で他業種との干渉を確認することが非常に重要です。
② 墨出し
ダクトの位置や高さを確認し、必要な墨出しを行います。
特に、
天井高さ
梁下寸法
設備スペース
を確認します。
③ 支持金物を施工
ダクトを支持するための吊り金物などを施工します。
確認するポイントは、
- 吊り間隔
- アンカー
- 吊りボルト
- 振れ止め
- 支持方法
- 耐震対策
などです。
④ ダクトを搬入・組立
工場などで製作されたダクトを現場へ搬入し、順番に組み立てます。
大型のダクトでは、搬入経路や揚重方法も事前に確認します。
⑤ ダクトを吊り込み
支持金物へダクトを取り付けます。
このとき、
- レベル
- 勾配
- 位置
- 高さ
- 他設備との干渉
などを確認します。
⑥ 吹出口・吸込口などを取り付け
末端部分には、
- 吹出口
- 吸込口
- ガラリ
- ベントキャップ
などを取り付けます。
⑦ ダンパーを取り付け
必要な場所にダンパーを設置します。
代表的なものには、
- VCD
- VD
- FD
- FVD
- 防煙ダンパー
などがあります。
※実際の名称や仕様は設計図・メーカー仕様を確認してください。
⑧ 保温・防露施工
必要なダクトには保温や防露処理を行います。
特に冷房用の給気ダクトでは、表面温度が低くなるため、結露対策が重要です。
ダクトの保温が必要な理由
ダクトの保温には、主に以下の目的があります。
① 結露防止
冷たい空気が流れるダクトでは、ダクト表面の温度が下がります。
周囲の空気が暖かく湿っていると、表面に結露が発生する可能性があります。
そのため、保温によってダクト表面の温度低下を抑えます。
② 熱損失・熱取得の防止
冷房・暖房した空気を搬送するとき、外部から余計な熱が入ったり、内部の熱が逃げたりすると空調効率が低下します。
保温によって熱の移動を抑えます。
ダクト施工で重要な「気密」
ダクトでは、空気漏れを防ぐことが重要です。
ダクトの接続部などから空気が漏れると、
- 必要な風量が確保できない
- 空調能力が低下する
- エネルギー消費が増える
- 騒音が発生する
などの問題につながる可能性があります。
そのため、接続部のシール処理などを適切に行います。
ダクト施工で注意したい「圧力損失」
空気はダクトの中を流れるときに抵抗を受けます。
これを圧力損失といいます。
圧力損失が大きくなる原因には、
- ダクトが細い
- ダクトが長い
- 曲がりが多い
- 急激な断面変化
- ダンパー
- フィルター
- 吹出口
などがあります。
圧力損失が大きくなると、必要な風量を確保するためにファンへ大きな負荷がかかる場合があります。
ダクトの曲がりで注意すること
ダクトの曲がりが多いと、空気の流れに抵抗が生じます。
また、急激な曲がりや不適切な納まりは、風量や騒音にも影響する可能性があります。
施工時には、
設計されたルートから勝手に変更しない
ことが重要です。
現場で納まりが悪い場合は、設備担当者や設計者と協議して変更します。
ダクトと梁の干渉に注意
現場監督として特に注意したいのが、ダクトと梁の干渉です。
ダクトはサイズが大きいため、
「梁下に入らない」
「梁貫通が必要になった」
「天井高さが確保できない」
といった問題が起きることがあります。
施工前に、
構造図
設備施工図
総合図
を確認しておくことが重要です。
ダクトと他設備との干渉
天井裏にはさまざまな設備があります。
例えば、
- 冷温水配管
- 給水管
- 排水管
- 消火配管
- 電線管
- ケーブルラック
- スプリンクラー
- ダクト
などです。
特に大型のダクトはルート変更が難しい場合があります。
そのため、施工前の総合図・BIM・現地確認などで干渉を確認しておくことが重要です。
防火区画を貫通するダクト
ダクトが防火区画を貫通する場合には、通常のダクト施工とは別に防火上の対応が必要になります。
例えば、
- 防火ダンパー
- 貫通部の処理
- 区画処理
- 防火材料
などです。
ここは施工不良が竣工検査などで問題になりやすいポイントなので、
「ダクトが防火区画を貫通していないか?」
を確認する癖をつけておきましょう。
ダンパーとは?
ダクト設備では、ダンパーも重要です。
ダンパーとは、ダクト内の空気の流れを調整・遮断するための機器です。
例えば、
VCD
風量を調整するために使用されます。
VD
風量調整などに使用されます。
FD
火災時などに空気の流れを遮断する目的で使用されます。
防煙ダンパー
煙の拡散を防ぐために使用されます。
種類によって役割が異なるので、図面の記号と凡例を確認しましょう。
ダクトの試験・調整
ダクト工事が完了したら、必要に応じて試験・調整を行います。
代表的なのが、
風量測定
です。
例えば、
AHU
↓
給気ダクト
↓
各吹出口
という系統の場合、それぞれの吹出口から必要な風量が出ているか確認します。
風量調整とは?
風量調整とは、各吹出口などから出る空気の量を適切に調整することです。
例えば、
吹出口① → 500 m³/h
吹出口② → 300 m³/h
吹出口③ → 200 m³/h
など、設計風量に合わせて調整します。
ダンパーなどを調整しながら、各系統の風量をバランスさせます。
ダクト施工後に確認したいこと
現場監督としては、施工完了後に以下を確認するとよいでしょう。
施工状態
✅ ダクトルート
✅ ダクトサイズ
✅ レベル・高さ
✅ 支持間隔
✅ 吊りボルト
✅ 振れ止め
✅ 接続部
✅ シール処理
ダンパー
✅ 種類
✅ 位置
✅ 向き
✅ 操作性
✅ 点検スペース
保温
✅ 保温材
✅ 保温厚
✅ 継ぎ目
✅ 防露処理
✅ ダクト接続部
防火
✅ 防火区画貫通
✅ 防火ダンパー
✅ 貫通処理
✅ 区画処理
試験・調整
✅ 風量測定
✅ 風量調整
✅ 騒音確認
✅ 漏れ確認
✅ 制御確認
ダクトのよくある不具合
① 風量が足りない
原因として、
- ダクト漏れ
- ダンパー調整不良
- フィルター詰まり
- ダクトの圧力損失
- ファン能力不足
- ダクトサイズ不適切
などが考えられます。
② ダクトから異音がする
原因として、
- 風速が高い
- ダクトの振動
- ダンパーの調整不良
- 支持不足
- ダクト接続部の問題
などが考えられます。
③ ダクト表面が結露する
原因として、
- 保温不足
- 防露処理不良
- 保温材の隙間
- ダクト表面温度の低下
- 周囲湿度が高い
などが考えられます。
④ ダクトが振動する
原因として、
- 支持不足
- ファンの振動
- 風速過大
- ダクトの強度不足
- 接続不良
などが考えられます。
現場監督が特に注意したいポイント
ダクト工事では、施工が始まってから問題を発見すると手戻りが大きくなりやすいです。
特に重要なのが、
① 総合図
他設備との干渉を確認します。
② 天井高さ
ダクトが大きすぎると天井高さに影響します。
③ 梁との干渉
構造体との位置関係を確認します。
④ メンテナンススペース
ダンパーや機器へアクセスできるか確認します。
⑤ 防火区画
区画貫通部の処理を確認します。
⑥ 保温・防露
特に冷房系統では結露対策を確認します。
⑦ 風量
最終的には設計風量が確保されているか確認します。
ダクトと配管の違い
ダクトと配管は似ていますが、搬送するものが違います。
| 項目 | ダクト | 配管 |
|---|---|---|
| 主な搬送物 | 空気 | 水・蒸気・冷媒など |
| 主な設備 | 空調・換気 | 空調・給排水・衛生など |
| 形状 | 角・丸など | 円形が一般的 |
| 施工 | 吊り込みが多い | 支持・吊り込み |
| 主な確認 | 風量・気密 | 流量・圧力・漏れ |
簡単に覚えるなら、
ダクト=空気
配管=水・蒸気・冷媒など
です。
ダクトと配管を一緒に覚えると設備がわかりやすい
空調設備では、ダクトと配管がセットで登場することが多くあります。
例えばAHUでは、
冷温水配管
↓
AHUのコイル
↓
空気を冷却・加熱
↓
給気ダクト
↓
室内
という流れです。
つまり、
冷温水配管=熱を運ぶ
AHU=熱を空気へ伝える
ダクト=空気を運ぶ
という役割分担になります。
この関係を理解すると、空調設備の系統がかなり見やすくなります。
現場監督向けダクト施工チェックリスト
最後に、現場で使いやすいようにまとめます。
ダクト施工前
☐ 施工図確認
☐ 総合図確認
☐ ダクトサイズ確認
☐ ルート確認
☐ 天井高さ確認
☐ 梁との干渉確認
☐ 他設備との干渉確認
☐ ダンパー位置確認
☐ メンテナンススペース確認
ダクト施工中
☐ 墨出し確認
☐ 支持金物確認
☐ 吊り間隔確認
☐ レベル確認
☐ 接続部確認
☐ シール処理確認
☐ ダクトの変形確認
☐ ダンパー向き確認
施工後
☐ 保温確認
☐ 防露確認
☐ 防火区画確認
☐ 防火ダンパー確認
☐ 点検スペース確認
☐ 風量測定
☐ 風量調整
☐ 騒音・振動確認
まとめ
ダクトとは、空調や換気に使用する空気の通り道です。
主な種類には、
- 給気ダクト
- 還気ダクト
- 外気ダクト
- 排気ダクト
- 排煙ダクト
があります。
また、形状によって、
- 角ダクト
- 丸ダクト
- スパイラルダクト
- フレキシブルダクト
などに分類されます。
空調設備では、
AHU
↓
給気ダクト
↓
吹出口
↓
室内
↓
還気ダクト
↓
AHU
というように空気を循環させます。
現場監督として特に重要なのは、
「総合図」「天井高さ」「梁との干渉」「他設備との干渉」「支持」「ダンパー」「防火区画」「保温」「風量調整」
です。
特にダクトは天井裏に設置されることが多く、施工後に配管や電気設備と干渉していることが分かると、手戻りが大きくなります。
そのため、
「ダクトを入れてから他設備を考える」のではなく、施工前に総合図で全部の設備を確認する
ことが重要です。
また、ダクト工事は施工して終わりではありません。
最終的には設計された風量が各室にきちんと届いているかを確認する必要があります。
現場でダクトを見るときは、
「どこから空気が来て、どこへ送っているのか?」
を意識すると、空調・換気設備の仕組みが理解しやすくなります。
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