はじめに
空調設備や給湯設備、ボイラー設備などの現場では、**「熱交換器」**という機器がよく登場します。
しかし、
「熱交換器って何をする機械?」
「温水と冷水を混ぜているの?」
「プレート式とシェル&チューブ式は何が違う?」
「施工時にはどこを確認すればいい?」
と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
熱交換器とは、2つの流体を直接混ぜることなく、熱だけを移動させる機器です。
例えば、
高温の温水
↓
熱交換器
↓
低温の水を温める
というように、熱エネルギーだけを別の流体へ伝えることができます。
空調設備では、熱源設備と空調設備の間で熱を受け渡したり、一次側と二次側の配管系統を分けたりするために使用されます。
この記事では、現場監督や設備担当者向けに、
- 熱交換器とは何か
- 熱交換器の仕組み
- 熱交換器の種類
- プレート式熱交換器
- シェル&チューブ式熱交換器
- 二重管式熱交換器
- 空調設備での用途
- 給湯設備での用途
- 施工時の注意点
- メンテナンスのポイント
- よくあるトラブル
について、わかりやすく解説します。
熱交換器とは?
熱交換器とは、異なる温度の流体同士で熱エネルギーを移動させるための機器です。
ポイントは、
流体同士を基本的に混ぜずに、熱だけを移動させる
ということです。
例えば、
高温の温水
↓
熱交換器
↓
低温の水を加熱
という使い方ができます。
反対に、
冷たい冷水
↓
熱交換器
↓
別の流体を冷却
することもできます。
熱交換器には、さまざまな方式がありますが、空調・衛生・産業設備では非常に重要な機器です。
熱交換器の仕組み
熱交換器の基本的な仕組みはシンプルです。
例えば、高温の温水と低温の水を熱交換する場合、
高温側流体
↓
熱交換器
↓
隔壁を介して熱が移動
↓
低温側流体が温まる
という流れになります。
高温側の流体は熱を失って温度が下がり、低温側の流体は熱を受け取って温度が上がります。
つまり、
高温側 → 熱を渡す
低温側 → 熱を受け取る
という関係です。
熱交換器では水と水が混ざらない
熱交換器を理解するうえで重要なのが、
「熱は移動するが、流体そのものは基本的に混ざらない」
という点です。
例えば、
一次側に高温水
二次側に低温水
が流れている場合、熱交換器内部の伝熱面を介して熱だけが移動します。
そのため、
一次側の水
と
二次側の水
を別々の系統として扱うことができます。
熱交換器の基本構造
熱交換器にはさまざまな構造がありますが、共通して重要なのが伝熱面です。
伝熱面とは、熱を一方の流体からもう一方の流体へ伝える部分です。
熱交換器では、
高温側流体
↓
伝熱面
↓
低温側流体
という形で熱が移動します。
伝熱面を効率よく利用することで、コンパクトな機器でも大きな熱量を移動させることができます。
熱交換器の主な種類
代表的な熱交換器には、
- プレート式熱交換器
- シェル&チューブ式熱交換器
- 二重管式熱交換器
- 空気熱交換器
- コイル式熱交換器
などがあります。
現場で特に覚えておきたいのが、
プレート式
と
シェル&チューブ式
です。
① プレート式熱交換器
薄い金属板を何枚も重ねて構成した熱交換器です。
プレートとプレートの間に流体を流し、熱交換を行います。
イメージすると、
高温側
↓
┃プレート┃
低温側
↓
┃プレート┃
高温側
↓
┃プレート┃
というように、流体が交互に流れる構造になっています。
プレート式熱交換器の特徴
コンパクト
同じ熱交換能力で比較すると、シェル&チューブ式よりコンパクトにできる場合があります。
機械室など、設置スペースが限られる場所で使いやすいのが特徴です。
熱交換効率が高い
プレートによって大きな伝熱面積を確保できるため、効率よく熱交換できます。
分解・洗浄しやすいタイプがある
ガスケット式のプレート熱交換器では、プレートを分解して清掃できるタイプがあります。
ただし、清掃方法や分解の可否は機器仕様によって異なります。
② シェル&チューブ式熱交換器
円筒形の容器の内部に多数の伝熱管を配置した熱交換器です。
英語では、
Shell & Tube Heat Exchanger
と呼ばれます。
片方の流体を伝熱管の内部に流し、もう一方の流体を管の外側に流して熱交換します。
シェル&チューブ式の特徴
大容量に対応しやすい
大型設備や産業設備などで使用されることがあります。
高温・高圧条件に対応しやすい
用途や仕様によって、高温・高圧の流体を扱う設備にも使用されます。
構造が比較的頑丈
産業設備などで長期間使用されることがあります。
③ 二重管式熱交換器
1本の管の中に別の管を配置し、それぞれに異なる流体を流す方式です。
構造が比較的シンプルなのが特徴です。
小容量の熱交換や、特殊な用途などで使用されます。
④ 空気熱交換器
水と水だけではなく、
水と空気
の間で熱交換する機器もあります。
例えば、
- 空調機
- ファンコイルユニット
- 放熱器
- 冷却設備
などで使用されます。
AHUの冷却コイルや加熱コイルも、広い意味では熱交換を行う設備です。
熱交換器は空調設備でどう使われる?
空調設備では、熱交換器がさまざまな場所で使われています。
例えば、
熱源設備
↓
一次側配管
↓
熱交換器
↓
二次側配管
↓
AHU・FCU
という構成です。
熱交換器を設置することで、一次側と二次側の配管系統を分離できます。
一次側と二次側とは?
熱交換器を理解するうえで、
一次側
二次側
という言葉も覚えておくと便利です。
一次側
熱源機器側の配管系統です。
例えば、
- チラー
- ボイラー
- 地域冷暖房
- 熱源設備
などにつながっています。
二次側
実際に空調機などへ熱を供給する側です。
例えば、
- AHU
- FCU
- 放熱器
- 床暖房
などにつながります。
熱交換器によって、
一次側と二次側を分離
することができます。
熱交換器を使うメリット
① 配管系統を分離できる
一次側と二次側を分けられるため、それぞれの系統を独立して管理できます。
② 圧力を分けられる
一次側と二次側で異なる圧力条件にすることができます。
高層建物などでは特に重要な考え方です。
例えば、
高層階の配管圧力を抑えるために、熱交換器を利用して系統を分ける場合があります。
③ 水質を分けられる
一次側と二次側で異なる水質管理を行うこともできます。
④ 熱源を効率よく利用できる
熱源側で作った冷熱・温熱を、別の配管系統へ効率よく伝えることができます。
熱交換器の施工方法
現場では、以下のような流れで施工することが一般的です。
① 搬入・据付
まず熱交換器を所定の位置へ搬入・据付します。
確認するポイントは、
- 機器重量
- 搬入経路
- 基礎
- 据付位置
- レベル
- アンカーボルト
などです。
② 配管ルート確認
熱交換器には複数の配管が接続されます。
例えば、
- 一次側往き
- 一次側還り
- 二次側往き
- 二次側還り
- ドレン
- エア抜き
などです。
施工前に系統図と施工図を確認します。
③ 配管接続
熱交換器へ配管を接続します。
このとき重要なのが、
配管を機器に無理やり合わせない
ことです。
配管の芯ずれや重量、熱膨張による力が熱交換器へ伝わると、機器やノズルに負荷がかかる可能性があります。
④ バルブ類を取り付け
必要な場所に、
- 仕切弁
- バタフライ弁
- ボール弁
- ストレーナー
- チェック弁
- 制御弁
などを設置します。
⑤ 計測機器を取り付け
必要に応じて、
- 圧力計
- 温度計
- 差圧計
- 流量計
などを取り付けます。
⑥ 試験
配管接続後は、設計・仕様書に基づいて試験を行います。
確認するのは、
- 漏れ
- 圧力保持
- フランジ部
- バルブ部
- 機器接続部
などです。
熱交換器の施工時に重要なポイント
① 流れ方向を確認
熱交換器には、一次側・二次側それぞれに入口と出口があります。
配管を間違えると、本来の性能を発揮できない可能性があります。
機器の接続口表示
施工図
系統図
を照合しましょう。
② 往き・還りを間違えない
熱交換器では、
一次側往き・一次側還り
二次側往き・二次側還り
を確認します。
特に機器接続部では、施工図と現物のノズル表示を確認することが重要です。
③ エア抜きを確認
熱交換器や配管内に空気が溜まると、熱交換性能が低下する場合があります。
必要な場所にエア抜きが設置されているか確認します。
④ ドレンを確認
熱交換器内部や配管内の水を排出できるよう、必要な場所にドレン設備を設けます。
メンテナンス時にも重要です。
⑤ ストレーナーを確認
配管内の異物が熱交換器へ入ると、流路が詰まったり性能が低下したりする可能性があります。
そのため、必要な場所にストレーナーを設置します。
熱交換器の保温
空調設備で使用する熱交換器では、必要に応じて保温を行います。
特に冷水を扱う場合は、
結露防止
が重要です。
保温施工では、
- 保温材の厚み
- 継ぎ目
- 防湿処理
- フランジ周辺
- 配管接続部
- バルブ周辺
などを確認します。
保温が不十分だと、結露による水滴が発生する可能性があります。
熱交換器のメンテナンス
熱交換器は長期間使用すると、内部に汚れやスケールなどが付着することがあります。
その結果、
熱交換性能の低下
につながる場合があります。
点検では、
- 入口温度
- 出口温度
- 流量
- 圧力
- 差圧
- 漏れ
などを確認します。
熱交換器の代表的なトラブル
① 熱交換能力が低下する
原因として、
- プレートや伝熱管の汚れ
- スケール付着
- 流量不足
- エア溜まり
- 配管詰まり
などが考えられます。
② 差圧が大きくなる
熱交換器内部が汚れたり、流路が詰まったりすると、圧力損失が大きくなることがあります。
ストレーナーの詰まりも確認しましょう。
③ 水漏れする
原因として、
- ガスケット劣化
- フランジ接続不良
- ボルト締付不良
- 腐食
- 伝熱管の損傷
などがあります。
④ 結露する
冷水を扱う熱交換器では、
- 保温不足
- 防湿処理不良
- 保温材の隙間
- 表面温度低下
などによって結露が発生する可能性があります。
熱交換器とチラーの違い
熱交換器とチラーは、どちらも空調設備で重要ですが役割は違います。
チラー
水を冷却する機械
です。
熱交換器
一方の流体から別の流体へ熱を移動させる機器
です。
例えば、
チラー
↓
冷水をつくる
↓
熱交換器
↓
別系統の水を冷却
という使い方ができます。
つまり、
チラー=冷やす
熱交換器=熱を移す
と覚えるとわかりやすいです。
熱交換器とボイラーの違い
ボイラーも熱交換器も「熱」に関係しますが、役割が異なります。
ボイラー
燃料や電気などのエネルギーを利用して、水を加熱し、蒸気や温水をつくる設備です。
熱交換器
すでに存在する熱を、別の流体へ移動させる設備です。
つまり、
ボイラー=熱をつくる
熱交換器=熱を移す
と考えると理解しやすいです。
現場監督が確認すべきチェックポイント
熱交換器の施工管理では、以下を確認しましょう。
機器
✅ 型式・仕様
✅ 機器重量
✅ 据付位置
✅ 基礎
✅ レベル
✅ アンカーボルト
配管
✅ 一次側・二次側
✅ 往き・還り
✅ 配管径
✅ 流れ方向
✅ 配管支持
✅ 熱膨張対策
✅ エア抜き
✅ ドレン
バルブ・付属品
✅ ストレーナー
✅ バルブ
✅ チェック弁
✅ 制御弁
✅ 圧力計
✅ 温度計
✅ 流量計
試験
✅ 圧力試験
✅ 漏れ確認
✅ フラッシング
✅ 水張り
✅ エア抜き
保温
✅ 保温材
✅ 保温厚
✅ 継ぎ目
✅ 防湿処理
✅ フランジ周辺
✅ 配管接続部
現場で覚えておきたい熱交換器のポイント
熱交換器を見るときは、まず、
「どの流体から、どの流体へ熱を移しているのか?」
を確認しましょう。
例えば、
一次側:高温水
↓
熱交換器
↓
二次側:低温水
なら、
一次側から二次側へ熱を移している
と理解できます。
また冷水の場合は、
一次側:冷水
↓
熱交換器
↓
二次側:別系統の水
として、二次側の水を冷却することもできます。
まとめ
熱交換器とは、2つの流体を基本的に混ぜることなく、熱エネルギーを一方からもう一方へ移動させる機器です。
代表的な種類には、
- プレート式熱交換器
- シェル&チューブ式熱交換器
- 二重管式熱交換器
- 空気熱交換器
などがあります。
空調設備では、
熱源
↓
一次側配管
↓
熱交換器
↓
二次側配管
↓
AHU・FCU
という構成で使用されることがあります。
熱交換器を使うことで、
一次側と二次側の分離
圧力系統の分離
熱エネルギーの効率的な移動
などが可能になります。
現場監督としては、
「一次側・二次側」「往き・還り」「流れ方向」「配管支持」「エア抜き」「ドレン」「ストレーナー」「圧力試験」「保温」
を確認することが重要です。
特に施工時には、配管を機器に無理やり合わせないこと、そして冷水系統では結露対策を確実に行うことがポイントです。
熱交換器は一見すると単純な機器に見えますが、空調・給湯・熱源設備を支える非常に重要な設備です。
現場で熱交換器を見かけたら、
「熱をどこからどこへ移しているのか?」
を考えると、設備全体の系統が理解しやすくなります。
関連記事
- 地熱発電とは?仕組み・種類・メリット・デメリットを解説
- タービンとは?仕組み・種類・用途・発電との関係を解説
- チラーとは?仕組み・種類・役割をわかりやすく解説
- 冷凍機とは?仕組み・種類・施工時の注意点を解説
- ボイラーとは?仕組み・種類・用途をわかりやすく解説
- 蒸気とは?性質・種類・蒸気設備について解説
- 冷温水・冷水・温水配管とは?違い・種類・用途・施工時の注意点を解説
- 配管とは?種類・材質・施工方法をわかりやすく解説
- バルブとは?種類・役割・使い分けを解説
- AHUとは?仕組み・構造・役割を現場監督向けに解説
- FCUとは?仕組み・種類・施工ポイントを解説

コメント